
¥4,500
アフタートーク有り
北斎の娘・お栄(葛飾応為)を描いた作品ということで、興味を惹かれ観劇。
てがみ座を観るのは2013年の『地を渡る舟』以来二回目で、今回もとても良かった。
お栄役は初見の三浦透子さんという若い方。名前も存じ上げなかったが、これが初舞台だったらしい。田畑智子に似ていると思ったけど、友人の言う小池栄子説も有りかな。
最初に台詞を聞いてあんまり上手くないとは感じたけど、不思議とすぐに気にならなくなった。思い悩み情熱を持て余すお栄と、彼女が初舞台と格闘する様がちょうどよくはまったのかもなあ。ちょっと幼すぎる感はあるものの、好感が持てた。
主人公はお栄だけど、彼女を取り巻く人々の群像劇だったのかな。
北斎役の加納(幸和)さんは、とても楽しそうだった。めっちゃキュートで魅力的な画狂老人卍ww
夜鳴きそば屋のおじさんとそのおかみさんのエピソードにしみじみ。兄弟子、廓の人々、版元の主人。善次郎(渓斎英泉)への想い・・・。
ほぼ素舞台だったけど不織布と竹竿、格子戸と平台でいろいろな場面を表すのもおもしろい。絵は全て白紙や素通しの額だけで示され、観客の想像力に任せるというのも潔くていい。そうするしかない気もするけどw、舞台の味わい深いところでもあるよね。
時代物だけどカツラも使わず、女性は地毛を簡単に結い、男性はザンギリのまま。さすがに衣装は着物だったけど。
着物も簡素なものがほとんどだったけど、霧里という花魁だけはどーんとゴージャス! わー、うつくしいとおもったら女形で、ああ花組芝居の方かなあと予想したら全然違った。速水英人さんという大衆演劇の方だそうな。てか善次郎との二役か! へーえへーーええ〜。
北斎に画号を赦され、応為が打ち震える場面。立ち尽くす彼女の上から、さらさらと幾枚もの紙が舞い落ちてゆくのを見て・・・ついグッときてしまった。
私も絵は好きでずっと描いてたけど、四十の声を聞くころには描かなくなっちゃった。絵描きとしてのリアルな感情とは遠くなったなあとちょっと淋しくもある。名を成すような人というのはこうなんだなあ、などとぼんやり考えたり。
お栄(応為)といえば杉浦日向子のまんがで読んだ印象が強かったけど、これからはこの舞台のことも思い出しそう。
13日の日曜までの上演。おすすめです。
てがみ座 公式サイト
追記:先月、オランダの博物館で作者不明とされてた絵が北斎の作だと判明してニュースになっていた。初日の10日くらい前で、なんとタイムリーな!と驚いたが、まさに劇中にその絵を描くエピソードがあった。演者さんたちや劇作家の長田さんもびっくりしたんじゃないだろうか。
→毎日新聞の該当記事